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ひとり法人の年末調整は役員1人でも要る — 令和8年分は基礎控除が最大104万円、12月の最後の役員報酬で精算する

・ 約10分で読めます ・ 文責: ひとり経済圏

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年末調整は「従業員のいる会社がやるもの」という印象がありますが、役員報酬は税法上の給与です。役員1人・従業員なしの法人でも、役員報酬を払っていれば年末調整は自分でやることになります。

2026年(令和8年分)は、基礎控除の引上げが12月1日に施行される年です。11月までの源泉徴収は去年と同じ計算のままで、差額を12月の年末調整で一度に精算します。国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」を、役員1人の前提で読み直しました。

目次
  1. 先に結論:役員報酬を払っていれば必要。外れるのは年2,000万円超など
  2. いつやるか — 12月の最後の役員報酬を払う時。未払分も入れる
  3. 令和8年分で変わった4点 — 基礎控除は最大104万円、施行は12月1日
  4. 集める申告書は最大4枚。税務署には出さず、法人で保管する
  5. 役員1人で効く控除 — 天引きの社会保険料は申告不要、共済とiDeCoは証明書が要る
  6. 計算は6手順 — 年収360万円の例で、基礎控除の引上げ分は年税額8,100円
  7. 精算と納付 — 還付は納める税額から差し引く。納期の特例なら1月20日
  8. 道具 — 国税庁の年調ソフト(10月1日公開)と計算シートで足りる
  9. 年末調整のあと — 源泉徴収票と1月の提出物、令和9年分の準備
  10. まとめ
  11. 次に確認すること
  12. 出所

先に結論:役員報酬を払っていれば必要。外れるのは年2,000万円超など

国税庁は、年末調整の対象を「扶養控除等(異動)申告書を提出している人の全員」とし、例外を表にしています。ひとり法人に関係する行だけ抜き出すとこうなります。

区分中身
対象になる1年を通じて勤務している人、年の中途で就職し年末まで勤務している人
対象にならない本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
対象にならない年末調整を行う時までに扶養控除等(異動)申告書を提出していない人(乙欄適用者)
対象にならない2か所以上から給与を受け、他の支払者に扶養控除等(異動)申告書を出している人

タックスアンサーNo.2662も、源泉徴収の相手を「役員または使用人」と書いています。役員報酬は従業員の給与と同じ扱いです。つまり、自分の法人に扶養控除等(異動)申告書を出していて、役員報酬が年2,000万円以下なら対象です。

逆に、役員報酬を1円も払っていない年は、精算する給与がないので年末調整もありません。報酬ゼロのときの社会保険の扱いは強制適用の記事に書きました。

年の途中で会社員を辞めて法人を作った場合は、前の勤務先の給与と徴収税額も含めて年末調整します。前職の「給与所得の源泉徴収票」が手元に要ります。

いつやるか — 12月の最後の役員報酬を払う時。未払分も入れる

年末調整は「本年最後に給与の支払をする時」に行います。通常は12月です。

対象になる給与は、1月1日から12月31日までに支払うことが確定した給与です。資金繰りの都合で12月分の役員報酬を未払にしていても、支給日が到来して確定していれば本年の年末調整に含めます(タックスアンサーNo.2668)。未徴収の源泉所得税も集計に入れます。

うちは役員報酬を月額固定・賞与なしにしているので、集計は同じ金額が12行並ぶだけです。月ごとに額が違う法人ほど、ここで源泉徴収簿の出番が増えます。

令和8年分で変わった4点 — 基礎控除は最大104万円、施行は12月1日

「年末調整のしかた」の冒頭に、昨年と比べて変わった点が4つ挙がっています。

  1. 基礎控除の引上げ
  2. 給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に(令和8・9年分。給与収入220万円超の人は変更なし)
  3. 扶養親族等の所得要件が58万円以下から62万円以下に(収入が給与だけなら年収123万円以下から136万円以下に)
  4. 23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例(新生命保険料の一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に。令和8・9年分。3つの控除の合計上限12万円は変わらず)

役員1人の法人で全員に関係するのは1つ目です。令和8年分の基礎控除額は、合計所得金額に応じて次のとおりです。

合計所得金額(収入が給与だけの場合の年収)令和8年分改正前
132万円以下(206万円以下)104万円95万円
132万円超 336万円以下(475万1,999円以下)104万円88万円
336万円超 489万円以下(665万5,556円以下)104万円68万円
489万円超 655万円以下(850万円以下)67万円63万円
655万円超 2,350万円以下(2,545万円以下)62万円58万円

2,350万円超の区分(48万円・32万円・16万円、2,500万円超は適用なし)は改正がありません。

注意したいのは施行日です。これらの改正は令和8年12月1日に施行され、国税庁は「令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更は生じません」と書いています。11月までは改正前の税額表で源泉徴収し、12月の年末調整で、引上げ後の基礎控除と令和8年分の表を使って1年分を計算し直す。控除が増えた分の差額は、ここでまとめて精算されます。

集める申告書は最大4枚。税務署には出さず、法人で保管する

年末調整で使う申告書は7種類ありますが、4種類は1枚の兼用様式なので、紙としては最大4枚です。

申告書受けられる控除役員1人の法人では
扶養控除等(異動)申告書扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除必須。扶養する家族がいなくても、出していないと年末調整の対象から外れる
基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・所得金額調整控除申告書(兼用様式)基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除、所得金額調整控除必須。基礎控除はこの申告書に基づいて控除する
保険料控除申告書生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(申告分)、小規模企業共済等掛金控除(申告分)該当する支払いがあれば
住宅借入金等特別控除申告書住宅ローン控除(2年目以降)該当者のみ。用紙は税務署から本人に交付される

ひとり法人だと、申告書を書くのも受け取るのも自分です。それでも省略はできません。扶養控除等(異動)申告書は、本来は給与の支払者を経由して税務署長に出す書類ですが、国税庁の手続案内は、税務署長から特に提出を求められた場合以外は提出する必要はなく、給与の支払者が保管しておくとしています。書いて、法人の書類として残す、が作業の実体です。

扶養控除等(異動)申告書は「その年の最初に給与の支払を受ける日の前日まで」に出す書類なので、12月には令和9年分も一緒に書いておくと、1月の役員報酬で慌てません。

役員1人で効く控除 — 天引きの社会保険料は申告不要、共済とiDeCoは証明書が要る

控除のうち、ひとり法人の役員で実際に金額が動くのは次の3つです。

小規模企業共済は役員個人が加入して個人の所得から控除するもので、法人の経費にする経営セーフティ共済とは帳簿の置き場所が違います。この区別は2つの共済の記事にまとめました。年末調整で出てくるのは小規模企業共済のほうだけです。

控除の対象は「本年中に支払ったもの」だけです。12月分の掛金や保険料が年内に引き落とされているかで金額が変わるので、証明書の金額と通帳を突き合わせておきます。

計算は6手順 — 年収360万円の例で、基礎控除の引上げ分は年税額8,100円

「年末調整のしかた」の計算手順は6つです。

  1. 1年分の給与と徴収税額を集計する
  2. 給与所得控除後の給与等の金額を、令和8年分の表で求める
  3. 扶養控除額等の合計額を出す
  4. 所得控除額の合計額を出す(社会保険料・小規模企業共済等掛金・保険料・配偶者・扶養・基礎控除)
  5. 課税給与所得金額(1,000円未満切捨て)に速算表の税率を掛けて、算出所得税額を出す
  6. 住宅ローン控除を引き、102.1%を掛けて年調年税額にする(100円未満切捨て)

仮の数字で流れを追います。役員報酬が月30万円(年360万円)、天引きした社会保険料が年54万円(仮置き)、扶養親族なし、ほかの控除なしの場合です。

手順令和8年分改正前の基礎控除だったら
給与の総額3,600,000円3,600,000円
給与所得控除後の金額(表から)2,440,000円2,440,000円
社会保険料控除(仮)540,000円540,000円
基礎控除1,040,000円880,000円
課税給与所得金額860,000円1,020,000円
算出所得税額(5%)43,000円51,000円
年調年税額(×102.1%)43,900円52,000円

基礎控除が88万円から104万円に上がった分で、年税額は8,100円下がります。11月までは改正前の税額表で徴収しているので、この差は12月の精算で戻る側に出ます。実際の還付額は、毎月の徴収額の合計と年調年税額の差で決まるので、自社の源泉徴収簿で確かめてください。

令和8年分の給与所得控除後の金額の表は令和7年分から改正されています。国税庁は「必ず令和8年分のものを使用してください」と書いています。去年のファイルを複製して使うと、ここで間違えます。

精算と納付 — 還付は納める税額から差し引く。納期の特例なら1月20日

毎月の徴収税額の合計と年調年税額を比べ、差額を精算します。

納付書(所得税徴収高計算書)には、「年末調整による超過税額」または「年末調整による不足税額」の欄に、精算した金額を書きます。還付で納付額が0円になっても、納付書は必ず税務署に提出します。e-Taxでも送信できます。

納付期限は、原則は翌月10日、納期の特例なら7〜12月分が翌年1月20日です(タックスアンサーNo.2505)。うちは設立時に納期の特例を申請しているので、年末調整の結果は1月20日の納付1回に反映する形になります。

年末調整のあとで保険料を払った、申告書を出し忘れていた、という場合のやり直しは、源泉徴収票を本人に交付する翌年1月末日までです。

道具 — 国税庁の年調ソフト(10月1日公開)と計算シートで足りる

役員1人なら、有料の給与計算ソフトがなくても国税庁の無料ツールで回せます。

道具何に使うか令和8年分
年調ソフト(年末調整控除申告書作成用ソフトウェア)受け取る側として、基礎控除申告書や保険料控除申告書を作る。対応する保険会社等の控除証明書データを取り込める正式版が2026年10月1日公開。12月1日以後の年末調整に対応
年末調整計算シート(Excel)払う側として、給与の総額や控除額を入れて年税額を計算する令和8年用を掲載中。国税庁の動作確認はWindows 11のExcel
源泉徴収簿毎月の給与・徴収税額と、年末調整の計算過程を残す帳簿計算シートを使えない環境ではこれに手で記入

給与計算ソフトを使っている法人は、年末調整の機能で申告書の回収から源泉徴収票の出力までつながります。その場合も、令和8年分の改正(12月1日施行)に対応した版になっているかは確認が要ります。

うちは会計ソフトに役員報酬と社会保険料を毎月同額で登録しているので、手順1の集計は帳簿から拾えます。会計ソフトの選び方は別の記事に書きました。

年末調整のあと — 源泉徴収票と1月の提出物、令和9年分の準備

年末調整が終わると、次の作業が続きます。

まとめ

次に確認すること

  1. 令和8年分の扶養控除等(異動)申告書を、自分の法人宛に書いて保管してあるか
  2. 小規模企業共済・iDeCo・生命保険・地震保険の控除証明書が届いているか
  3. 12月の役員報酬の支給日と、納期の特例の承認を受けているか(受けていなければ納付は翌月10日)

出所