ひとり法人の会計ソフト、1期使って分かった「決算を自分でやる」前提の選び方
うちの法人はクラウド会計ソフト(freee会計)を1期分使い、記帳から決算整理の手前までを自分で回しました。この記事はその実体験がベースです。
先に立場を明確にしておきます。実際に使ったのはfreeeだけです。マネーフォワードクラウドや弥生については公式サイトの公表情報しか知らないので、「どれが一番」は書きません。書くのは、1期使って分かった「何を基準に選ぶべきだったか」です。これはどのソフトを選ぶ場合でも同じ物差しになります。
目次
1期使って分かったこと:入力は仕事にならない、判断が仕事になる
使う前は「会計ソフト=仕訳を入力する道具」だと思っていました。1期使った後の実感は違います。
入力のほとんどは、連携が勝手にやってくれます。 法人口座とカードを同期すれば、明細が取引として流れ込んでくる。日々の作業は、流れてきた取引に勘定科目を当てて登録するだけです。
手が止まるのは入力ではなく、判断でした。
- この支払いは法人の経費か、役員の立替か
- この仕入れの消費税区分はどれか(課税売上対応か、共通対応か)
- 期末在庫の振替をどの科目でやるか
つまり会計ソフト選びで見るべきは「入力が楽か」より、「判断に迷ったとき、ソフトと情報がどれだけ助けてくれるか」です。ここから3つの軸が出てきます。
軸1:口座・カードの連携が「自分の使う銀行」に対応しているか
いちばん効いた機能は、地味ですが明細の自動同期です。
決算で詰まった話にも書きましたが、うちの決算作業の大半は「後から復元する作業」でした。連携済みの法人口座・法人カードの分は、ほぼ手間ゼロ。個人カードで払っていた分だけが、明細の抽出と手入力で時間を食いました。
だから選ぶときは、機能一覧の「連携数」ではなく、自分が実際に使う銀行とカードが連携対象かを個別に確認します。とくにネット銀行・ビジネスカードは対応状況に差があります。ここが繋がらないと、毎月の手入力が固定費として残り続けます。
1つ実例を。法人口座の記事に書いたとおり、うちは銀行のサービス名称が変わったとき、会計ソフト側の口座名は自動では変わりませんでした。連携は残高も明細も生きていて、名前だけがズレる。申告書に書く口座名で気づいた話です。連携は「繋いだら終わり」ではなく、こういう小さい保守が要ります。
軸2:消費税の設定が、自分の課税パターンに追従できるか
ひとり法人の会計でいちばん難しいのは、法人税ではなく消費税でした。
うちは物販でインボイス登録をしているため、本則課税・個別対応方式です。すると取引ごとに、
- 課税売上にのみ対応(販売用の仕入れ)
- 共通対応(会計ソフト代・通信費などの一般管理費)
- 対象外・不課税
の区分を当てることになります。個人からの仕入れには古物商特例、ポイント払いには値引き処理と、物販は消費税の例外が多い。この区分を取引登録の画面でそのまま選べるか、後からまとめて直せるかは、ソフトの使い勝手の差が出るところです。
免税事業者のまま行く人、2割特例や簡易課税を使う人は、ここの要件がまるごと変わります。自分の課税パターンを先に決めてから、その設定ができるかを確認するのが順序です。
軸3:料金は「月額」ではなく「決算・申告までの総額」で見る
会計ソフトの料金ページは月額が大きく書いてありますが、実際に払う総額は構成で変わります。確認する項目はこれだけです。
| 確認項目 | なぜ見るか |
|---|---|
| 法人向けプランの年額 | 個人事業主向けの安いプランは法人では使えない |
| 決算書の作成が含まれるか | プランによっては上位限定 |
| 法人税・消費税の申告書まで作れるか | 別ソフト・別料金のことがある |
| 電話・チャットサポートの有無 | 決算期に詰まったとき、これが効く |
| 税理士に渡す場合の共有機能 | 自力申告をやめる場合の逃げ道 |
うちの実感では、申告書のところが分岐点です。記帳と決算書まではソフトで完結しても、法人税・地方税・消費税の申告書は別の壁として残ります。「最後まで自分でやる」なら申告書作成までカバーされる構成か、「申告だけ税理士に投げる」なら共有のしやすさか。ここを決めてから料金を見ると、比較が一気に楽になります。
会計ソフト代自体の扱いも一応書いておくと、消費税の上では共通対応の課税仕入れになり、売上が小さい期は控除がほぼ効かないことがあります(個人カード払いの記事で書いた論点です)。法人税の上では普通に損金です。
移行コストは「データ」より「慣れ」
最後に、乗り換えを考えている人向けに。
会計データそのものは、多くのソフトが仕訳のインポート・エクスポートに対応しています。重いのはデータ移行より、科目の対応関係と操作の慣れを作り直すことでした。うちが1期使って乗り換えを考えないのは、freeeが完璧だからではなく、期の途中の乗り換えは判断の基準がブレるからです。変えるなら期首。これはどのソフトでも同じだと思います。
まとめ
- 会計ソフトの仕事は入力の代行ではなく、判断の補助。選ぶ基準もそこに置く
- 軸1:自分が使う銀行・カードと連携できるか。個別に確認する
- 軸2:自分の消費税パターン(本則・個別対応/簡易/免税)を設定できるか
- 軸3:料金は月額でなく、決算書・申告書までの総額。申告書をどうするかを先に決める
- 乗り換えるなら期首。期中の変更は判断基準がブレる
機能表を上から比べるより、自分の1期がどこで詰まるかを想像して、そこを助けてくれるかで見る。1期回した今なら、最初からそう選びます。