事業の経費を個人カードで払うと、決算で1件ずつ拾い直すことになる
法人を作った後も、しばらく気づかないのがこれでした。
事業で使っているSaaSやAPIの引き落としが、全部そのままの個人カード。
法人を作ったからといって、既存のサブスクの支払い方法が自動で変わるわけではありません。開発ツール、AIのAPI、クラウド。どれも法人設立の前から使っていて、カードだけが個人のまま残っていました。
経費に入れられないわけではない
まず、これは入れられます。事業に使っているなら法人の経費です。
処理はこうなります。
支払手数料 or 通信費 / 役員借入金
法人がまだ払っていないので、役員が法人に立て替えた(=法人が役員から借りている)という形にします。法人の費用は増え、その分だけ赤字(欠損金)が増える。青色申告なら繰り越せます。
つまり税額の面では損をしていません。損をするのは、決算のときの時間です。
何が面倒なのか
面倒なのは、1件ずつ判定して拾い上げるところです。
法人カードなら、明細がそのまま法人の取引です。freeeのような会計ソフトに同期すれば、あとは勘定科目を当てるだけ。
個人カードだと、こうなります。
- 個人カードの明細を、期間ぶん全部出す
- その中から事業に使ったものだけを選ぶ
- 私用と混ざっているものは按分の根拠を考える
- 1件ずつ役員借入金の仕訳を作る
- 領収書・請求書を、法人の証憑として揃え直す
2と3が重い。 家族の買い物と開発ツールの請求が同じ明細に並んでいて、そこから事業ぶんだけを引き抜く作業になります。金額の大小ではなく、件数と混ざり具合で決まります。
うちは1期目に、セゾン・アメックス・法人カードの3枚ぶんを期間まるごと保存し直すところから始めました。
消費税の側は、もっとややこしい
さらに、SaaSやAPIは消費税の扱いが素直ではありません。
用途区分の問題があります。本則課税で個別対応方式を取ると、課税仕入れを3つに分けます。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 課税売上に直接対応 | 販売用の在庫の仕入れ |
| 非課税売上に対応 | 預金利息のためだけにかかった費用 |
| 共通対応 | 会計ソフト、通信費、カード年会費などの一般管理費 |
共通対応のものは、課税売上割合を掛けた分しか控除できません。売上がほとんど立っていない期だと、この割合が極端に低くなり、実質的に控除がゼロになることがあります。
加えて海外のSaaSは扱いが別枠です。国外の事業者から受ける電気通信利用役務の提供は、事業者向けか消費者向けかで課税の仕組みが変わります。ここは自分で結論を出さず、確認事項として税理士に渡しました。
つまり個人カード払いのSaaSは、法人税の側では損金として効くが、消費税の側ではほぼ効かないことがある。「経費に入れれば全部戻る」ではありません。
2期目からやったこと
やったことは単純です。事業で使うものの支払いを、法人カードに寄せる。
| 個人カード払い | 法人カード払い | |
|---|---|---|
| 決算での作業 | 明細から事業ぶんを抽出→仕訳 | 明細がそのまま取引 |
| 仕訳 | 役員借入金を経由 | そのまま費用 |
| 私用との混在 | 起きる | 起きない |
| 証憑の名義 | 個人 | 法人 |
| 会計ソフト連携 | 手作業 | 同期 |
移し替えるときのコツが1つあって、「事業でしか使わないもの」から先に移すと迷いません。開発ツール、サーバー、事業用ドメイン。逆に、私用と共用しているもの(自宅の回線、電気)は最後まで残ります。それは按分の話になるので、別に考えます。
法人カードの年会費は経費です。うちが払っているビジネスカードは年2,200円でした。決算で数時間を取り戻せるなら、年2,200円は安いというのが1期やってみた実感です。
まとめ
- 事業の経費を個人カードで払っても、法人の費用にはできる(役員借入金を経由)
- 税額では損しないが、決算で1件ずつ抽出・判定・仕訳する作業が発生する
- 明細に私用が混ざっていると、そこから引き抜く作業が一番重い
- SaaS・通信費は共通対応になりやすく、売上が小さい期は消費税の控除がほぼ効かないことがある
- 海外SaaSは課税の仕組みが別。自分で結論を出さず確認事項にする
- 移すときは「事業でしか使わないもの」から。私用と共用のものは按分の話として切り離す
科目と処理は事業の実態で変わります。金額が大きいものは税理士に確認してください。確認する前に、明細を1枚にまとめておくだけで話が早くなります。