ひとり法人、期限があるものだけ並べた — 設立前後でやることの順番
法人を作るときの「やることリスト」は、検索すればいくらでも出てきます。ただ、あの形だとどれが今日やるべきで、どれが後でいいのかが分かりません。
実際に1期分を回してみて分かったのは、順番が本当に決まっているのは期限があるものだけだということでした。それ以外は、いつやってもいい。
期限のあるものだけを、時系列に並べます。
設立前に決めること(後から変えるのが面倒なもの)
決算月
設立月の前月を決算月にすると、1期目が最長になります。 7月設立なら6月決算で約12か月。8月決算にすると1期目が1か月ちょっとで終わり、いきなり決算がきます。
長い方がいいとは限りません。ただし短くする理由がないなら長く取るのが素直です。決算は年に1回来る作業なので、回数が減るほうが楽です。
事業目的
定款に書く事業目的です。後から追加すると変更登記の費用がかかります。
物販をやるなら、古物営業を含む書き方にしておく。古物商許可の申請で定款の事業目的を見られるので、ここが噛み合っていないと申請前に定款変更からやり直しになります。将来やるかもしれないものは、この段階で入れておくほうが安いです。
資本金
資本金1,000万円未満なら、消費税は原則として最初の2期が免税です。ここを超えると初年度から課税事業者になります。
ただし後述のとおり、インボイス登録をすると自分から課税事業者になります。免税の期間をどう扱うかは、取引先が事業者かどうかで判断が変わります。
設立から3か月以内(ここが一番きつい)
役員報酬を決める
設立の日から3か月以内に開始する給与でないと、定期同額給与として扱えません。 期の途中で金額を変えると、原則として損金にできない部分が出ます。
ゼロにするという選択もあります。うちの1期目は役員報酬ゼロでした。売上がほぼ立っていない状態で報酬を出すと、法人の赤字が増え、個人に所得税・住民税・社会保険がかかる。ゼロなら定期同額給与の論点そのものが消えます。
副業として法人を作るなら、ゼロで始めて2期目以降で見直す形は現実的だと思います。
青色申告の承認申請
設立1期目は、「設立の日以後3か月を経過した日」と「1期目の終了の日」のうち、早いほうの前日までが期限です。
これを逃すと白色申告になり、赤字の繰越しができません。1期目は赤字になりやすいので、ここを落とすと後々効きます。うちの1期目も赤字で、繰り越せる前提で組んでいます。
各種の届出
- 法人設立届出書(税務署・都道府県・市町村)
- 給与支払事務所等の開設届出書(給与を払うなら、開設から1か月以内)
- 源泉所得税の納期の特例の承認申請(毎月納付を年2回にまとめられる)
役員報酬ゼロでも、後で払う予定があるなら開設届は出しておく形になります。
いつでもいいが、早いほうがいいもの
| やること | 期限 | 早いほうがいい理由 |
|---|---|---|
| 法人口座の開設 | なし | 審査に日数がかかる。仕入れが始まる前に要る |
| 法人カードの作成 | なし | 経費を個人カードで払うと決算で宿題になる |
| 会計ソフトの導入 | なし | 期の途中から入れると、それまでの分を後から入力することになる |
| 古物商許可の申請 | なし | 標準処理期間が40日程度。中古を扱う前に要る |
| インボイス登録 | なし | 登録日から課税事業者になる。登録日の選び方に意味がある |
法人カードだけは、他より優先度が高いと思っています。 事業の経費を個人カードで払うと、決算のときに1件ずつ「役員借入金」として拾い直すことになります。1期目にこれをやって、二度とやりたくないと思いました。
1期目の終わりに来るもの
決算・申告は事業年度終了から2か月以内
6月決算なら8月末。2か月は思っているより短いです。
うちの1期目は、期末在庫の品目確定、証憑の突合、売却明細と入金の照合が全部残った状態で決算月を迎えました。実務の量は「取引の件数」ではなく「後から復元しないといけない件数」で決まります。
均等割は赤字でも払う
法人住民税の均等割は、赤字でも発生します。資本金1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円程度(自治体による)。設立年度は月割りです。
「利益が出なければ税金はかからない」は、法人では成り立ちません。年7万円は、法人という器の維持費として最初から見ておくのが正しい。
消費税は還付になることもある
インボイス登録をして本則課税なら、売上がほぼ無く仕入れが大きい期は、仕入税額控除で還付申告になることがあります。
物販は在庫を積む期がこれに当たりやすい。ただし還付を受けるには、適格請求書(インボイス)の保存が要件です。領収書を捨てていると、還付そのものが消えます。
まとめ
- 順番が決まっているのは期限があるものだけ。それ以外は好きな順でいい
- 設立前に決めるのは決算月・事業目的・資本金。後から変えると費用がかかる
- 設立から3か月以内に、役員報酬と青色申告承認申請。ここが1期目の山
- 法人カードは早いほうがいい。個人カード払いは決算の宿題になる
- 均等割は赤字でも年7万円程度。器の維持費として見込んでおく
- 決算・申告は事業年度終了から2か月以内。復元作業が残っていると足りない
期限と要件は制度改正で変わります。実際の申請では国税庁と自治体の最新情報、および税理士の確認を取ってください。この記事は「何を確認しに行くか」の一覧です。