1期目の決算で詰まった6か所 — 会計の知識ではなく、記録の所在で止まる
決算の前に想像していた困りごとは「仕訳が分からない」でした。実際に詰まったのは、6か所とも別の理由です。
その情報が、どこにあるか分からない。
会計の知識ではなく、記録の所在で止まりました。順に挙げます。
1. 期末に何が残っているか、台帳から言えない
期末棚卸。決算日時点の在庫を金額で出す作業です。
金額は分かりました。分からなかったのは中身です。台帳に「Apple製品」「Amazon仕入」としか書いていない行がいくつもあり、それが何の商品なのかが特定できない。
棚卸資産として計上するには品名の根拠が要ります。結局、部屋にある現物と請求書を突き合わせる作業になりました。数か月前に買ったものを、箱を開けて確認していく。
対策は単純で、仕入れた日に品名と型番を書く。「Amazon 3件」ではなく型番まで。これだけです。
2. 在庫を振り替え忘れると、利益が変わる
仕入れたときは仕入高(費用)で計上します。ただし期末に売れ残っているものは、その期の費用ではありません。
商品(棚卸資産) / 仕入高
この振替をして、はじめて売上原価が正しくなります。忘れると、売れていない在庫まで費用になり、利益が実際より小さく出ます。
物販は在庫が積み上がる事業なので、ここの影響が大きい。1期目は仕入れた在庫がほぼ丸ごと期末に残っていたので、振替の額がそのまま損益を動かしました。
3. 証憑が3か所に散っていた
これが一番効きました。
- 請求書のPDFはクラウドストレージ
- スマホで撮った領収書の写真は別のクラウド
- 台帳のExcelはローカル
- 買取伝票は紙
どれが正本か分からない状態で決算を始めてしまい、「この請求書、さっき見たけどどこだっけ」を延々やることになりました。
途中でやめて、データ所在マップを1枚作りました。「何が、どこにあるか」だけを書いた表です。
| 用途 | 置き場所 |
|---|---|
| 作業記録・論点の正本 | (1つに決める) |
| 仕入の請求書 | (1つに決める) |
| 売上の伝票 | (1つに決める) |
| 在庫台帳の正本 | (1つに決める・バックアップの所在も書く) |
作るのに20分。先に作っておけば、探す時間の大半が消えていました。
4. 法人で仕入れて個人名義で売った分の判定
法人の資金で仕入れた在庫を、個人アカウントで売っていた分です。1件ずつ「法人の在庫か、私物か」を判定し、対応する仕入れを探す作業になりました。
これは量が多かったので別の記事に分けました。2期目から売却も法人名義に統一して、判定作業そのものを無くしています。
5. 消費税の用途区分
本則課税で個別対応方式を取ると、課税仕入れを用途で分けます。
| 区分 | 例 | 控除 |
|---|---|---|
| 課税売上に対応 | 販売用の在庫 | 全額 |
| 非課税売上に対応 | 預金利息のためだけの費用 | なし |
| 共通対応 | 会計ソフト、通信費、カード年会費 | 課税売上割合ぶん |
分けること自体は難しくありません。難しいのは、1件ずつ「これはどれか」を決めることでした。特に共通対応に落ちるものは、控除がほぼ効かない期があるので、判定の影響が読みにくい。
ここは自分で結論を出さず、区分の方針を決めて税理士に確認する形にしました。
6. 設立日が、すぐには出てこない
最後は拍子抜けするようなものですが、実際に止まりました。
自分の会社の設立日が、手元ですぐ確認できない。 登記簿を取るか、設立時に使ったサービスの画面を探すことになります。事業年度の判定に使う基礎情報なので、これが出ないと先に進みません。
同じ種類のものが他にもあります。法人番号、インボイスの登録番号と登録日、資本金、事業年度。全部1枚のメモにまとめておくべき情報でした。決算のたびに、年に1回だけ必要になります。
2期目に持ち越したルール
1期目の反省として決めたのは4つです。
- 仕入れも売却も、その場で台帳に1行書く。 後から半年分を復元する作業が、決算で一番時間を食いました
- 注文番号を必ず控える。 仕入れと売却を1対1で結べる唯一の鍵
- 証憑はその日のうちに、決めた場所へ保存する。 置き場所は事前に1つに決めておく
- 会社の基礎情報を1枚にまとめる。 設立日、法人番号、登録番号、資本金、事業年度
どれも決算の知識ではありません。日々の記録の付け方の話です。
まとめ
- 決算で止まるのは仕訳ではなく、記録の所在
- 期末在庫は金額より品名の特定で止まる。仕入れた日に型番まで書く
- 在庫の振替を忘れると損益が変わる。物販は影響が大きい
- 証憑の置き場所は先に1つに決める。データ所在マップを1枚作るだけで効く
- 消費税の用途区分は、方針を決めてから専門家に確認する
- 会社の基礎情報は1枚のメモに。年1回しか使わないので毎回探すことになる
決算の作業量は、取引の件数ではなく後から復元しないといけない件数で決まります。ここだけは、1期目のうちに知っておきたかった。