法人で仕入れて個人アカウントで売ると、決算で「役員貸付金」の宿題になる
法人を作った直後に、いちばんやりがちな形がこれだと思います。
仕入れは法人のカードと法人口座。売却は、前から使っている個人のアカウント。
売る場所は既にアカウントも評価も揃っている。わざわざ法人名義で作り直す理由が、そのときは見当たりません。1期目のうちは、これで回していました。
決算で詰まりました。
何が起きるか
売上そのものは法人のものです。法人の資金で仕入れた在庫を売ったのだから、売上は法人に立ちます。ここは問題ない。
問題はお金の行き先です。入金は個人の口座に入っている。法人の売上なのに、法人にお金が入っていない。
会計上は「法人が個人(役員)にお金を貸している」という形で処理します。
役員貸付金 / 売上高
そのあと個人から法人口座へ入金したときに、貸付金が消えます。ここで、入金をもう一度売上として計上しないこと。 二重計上になります。
決算で何が宿題になるか
仕訳の形だけ見れば単純です。面倒なのは、決算のときに1件ずつ「これは法人のものか個人のものか」を判定し直すことでした。
1期目に実際にやったのはこれです。
- 半年分の売却履歴を、後から掘り起こす
- 1件ずつ、対応する仕入れを探す(どの仕入れを、いつ、いくらで売ったか)
- 法人在庫の売却か、個人の私物の売却かを判定する
- 判定した結果を仕訳に落とし、証憑を揃える
64行ぶんやりました。1行あたり数分でも、それだけで半日以上です。しかも記憶が薄れているので、当てにいく作業になります。
2期目から変えたこと
在庫の売却を、法人アカウント・法人名義に統一しました。変えたのはそれだけです。効果は大きかった。
| 個人名義で売る | 法人名義で売る | |
|---|---|---|
| 売上の計上 | 役員貸付金を経由 | そのまま売上 |
| 入金先 | 個人口座 → あとで法人へ | 法人口座に直接 |
| 決算での判定 | 1件ずつ法人/個人を判定 | 不要 |
| 伝票の名義 | 個人 | 法人 |
| インボイスの回答 | 「登録なし」 | 「登録あり・番号◯◯」 |
一番効いたのは入金が法人口座に直接入ることです。通帳を見れば売上が並んでいる。突合という作業そのものが消えました。
買取店で聞かれること
法人名義で売りに行くと、店頭で聞かれます。
「適格請求書発行事業者ですか?」
インボイス登録をしていれば「はい」と答えて登録番号を伝えます。買取店側は、仕入税額控除のためにこれを確認しています。答え方を決めておかないと、その場で止まります。
登録前は「いいえ」でした。買取店は古物商なので、こちらが登録事業者でなくても、店側は古物商特例で控除できます。ただしこちらが登録事業者になった後で「いいえ」と答えるのは誤りなので、登録した時点で回答を切り替える必要があります。
台帳に必ず書く1項目
売却を法人名義に寄せたうえで、もう1つ決めたことがあります。
注文番号を必ず控える。 仕入れと売却を1対1で結べる唯一の鍵がこれでした。品名と金額だけだと、同じ機種を複数台扱った時点で対応が取れなくなります。
台帳の1行はこの形にしています。
仕入日 / 仕入先 / 注文番号 / 品名・型番 / 税込仕入 /
売却日 / 売却先 / 売却額 / 名義
そしてその場で書く。1期目に半年分を復元して分かったのは、後からまとめる作業のコストが、その場で1行書くコストの何十倍にもなるということでした。
まとめ
- 法人で仕入れて個人名義で売ると、売上とお金の流れが分かれ、役員貸付金の処理が必要になる
- 個人口座に入った売却代金を、法人へ入金するときに再度売上計上しない(二重計上)
- 決算で本当に重いのは仕訳ではなく、1件ずつの法人/個人の判定作業
- 売却も法人名義にすると、入金が法人口座に直接入り、判定作業そのものが消える
- 仕入れと売却は注文番号で結ぶ。品名と金額だけでは同一機種で追えなくなる
具体的な勘定科目と処理は事業の実態で変わります。金額が大きいものは税理士に確認してください。ここに書いたのは、確認する前に自分で整理しておくと話が早い部分です。