PCを買ったひとり法人が毎年1月にやること — 償却資産申告は「税金ゼロでも申告あり」
法人1期目の1月、都税事務所から「固定資産税(償却資産)申告書」という封筒が届きました。土地も建物も持っていないのに固定資産税? と一瞬固まったのを覚えています。
答えは、固定資産税の対象は土地と家屋だけではない、でした。事業用のPC・什器・機械・看板といった「償却資産」も対象で、こちらは役所が把握できないので持ち主が毎年申告する仕組みになっています。事業用PCの買い方で金額の壁の話を書きましたが、その壁がここでもう一度効いてきます。
仕組みを3行で
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何を | 1月1日(賦課期日)時点で事業に使える償却資産(土地・家屋以外) |
| いつまでに | その年の1月31日まで(2026年は1月31日が土曜のため2月2日(月)。受付は1月5日から) |
| どこへ | 資産のある区の都税事務所(23区の場合)。23区外は市区町村。eLTAXの電子申告も可 |
税額は「課税標準額 × 1.4%」で、課税標準額の合計が150万円未満なら課税されず、納税通知書も来ません。ひとり法人がPC1〜2台と机を持っている程度なら、まず免税点の下です。
ただしここが肝心で、課税されないことと、申告しなくていいことは別です。手引きには、正当な理由なく申告しないと過料(地方税法386条)、虚偽の申告には懲役・罰金(同385条)の規定があると書かれています。うちも1期目から「免税点未満・税額ゼロ」の申告を毎年出しています。
「申告する資産」と「しない資産」は、経費の落とし方で決まる
一番混乱するのがここです。同じPCでも、金額の壁でどう経費にしたかで、償却資産申告の対象かどうかが変わります。手引きの整理はこうです。
| 買ったときの処理 | 償却資産の申告 |
|---|---|
| 10万円未満で、固定資産に計上せず一時に損金(消耗品費など) | 対象外 |
| 20万円未満で、3年間の一括償却資産にした | 対象外 |
| 20万円未満のリース資産(法人税法64条の2のリース) | 対象外 |
| 20万円未満でも、個別に減価償却している | 対象 |
| 青色の中小企業者の特例(30万円未満、2026年4月1日以後の取得は40万円未満)で即時償却した | 対象 |
| 通常の減価償却(PCなら耐用年数4年) | 対象 |
つまり、「一発経費」には2種類あって、償却資産の扱いが逆です。
- 10万円未満を消耗品費で落とした → 法人税でも固定資産税でも「資産ではない」扱い。申告しない
- 30万円未満(40万円未満)を青色の特例で落とした → 法人税では損金だが、固定資産税の世界では資産のまま。申告する
PCの売り場の記事で「サブ機は10万円未満、メイン機は特例で」と書きました。あの分け方をすると、サブ機は申告に出てこず、メイン機は毎年1月の申告書に載り続ける、ということになります。特例は法人税を早く減らせる代わりに、固定資産税側の台帳に残る。これを知らずに「特例で全部落としたから資産は無い」と思って申告漏れになるのが、ひとり法人でいちばんありそうな事故です。
評価額は「半年分減った値」から始まる
申告書には取得価額と耐用年数を書きます。評価額(課税標準額のもと)は都のシステムが計算するので自分で出す必要はありませんが、免税点に届くかどうかの見当をつけるために仕組みだけ知っておくと便利です。
| 取得時期 | 評価額 |
|---|---|
| 前年中に取得 | 取得価額 × (1 − 減価率 ÷ 2)。取得月にかかわらず半年分減った値 |
| それより前に取得 | 前年度の評価額 × (1 − 減価率) |
減価率は耐用年数で決まっていて、PCの4年なら0.438。前年中に買ったPCの評価額は取得価額の約78%、その翌年は約56%、と下がっていきます。ただし取得価額の5%が下限で、それ以下にはなりません。古いPCを使い続けている限り、台帳からは消えないということです。1月1日に取得したものは前年12月取得として扱われます。
ざっくり言えば、耐用年数4年の資産なら、取得価額の合計が200万円弱までは初年度の評価額が150万円を下回る計算です。ひとり法人がここを超えるのは、機械や車両(自動車税の対象になるものは除く)を持ち始めてからでしょう。
実際の1月の手順
うちが毎年やっている順番です。
- 12月中に、固定資産台帳と消耗品費の明細を並べる。 会計ソフトの固定資産台帳に載っているものが申告候補。消耗品費で落とした10万円未満は候補から外す
- 青色の特例で落としたものを台帳から拾い直す。 損金にしたので固定資産台帳から消えているソフトもある。ここが漏れやすい
- 除却・売却したものを「減少」として書く。 不用品の出口の記事で書いたように売った機材は、1月1日時点で持っていなければ申告から外れる
- 申告書に取得年月・取得価額・耐用年数を書いて、1月末までに提出。 2年目以降は前年の申告内容が印字された用紙が届くので、増減だけ書く
- 免税点未満なら6月に納税通知書は来ない。来なければそれで終わり
第1期決算で詰まった記事の「提出物が1つではない」問題と同じで、これは決算とは別の期限・別の提出先です。決算期がいつでも、償却資産申告は暦年の1月です。
まとめ
- 固定資産税は土地・家屋のほかに、事業用のPC・什器・機械(償却資産)にもかかる。持ち主が毎年1月1日時点の分を1月末までに申告する
- 課税標準額の合計150万円未満なら税金はかからないが、申告は要る。未申告には過料の規定がある
- 10万円未満を消耗品費で落としたものと、20万円未満の一括償却資産は申告対象外。青色の特例で即時償却したものは申告対象
- 評価額は初年度が半年分減った値、以後は毎年減価率ぶん減る。下限は取得価額の5%
- 特例で「一発経費」にした資産ほど申告漏れしやすい。固定資産台帳から消えていても拾い直す
次に確認すること
- 会計ソフトの固定資産台帳に、青色の特例で落とした資産が残っているか(消えていれば別に一覧を作る)
- 本店所在地の自治体の申告書様式と窓口(23区は都税事務所、それ以外は市区町村)。eLTAXで出すなら利用者IDの準備
- 1月1日時点で手放した資産が「減少」として反映されているか