小規模事業者持続化補助金は「従業員ゼロのひとり法人」でも使える — 50万円の2/3、ただし手間は公庫融資より重い
※本記事にはプロモーション(PR)を含みます。
IT導入補助金の記事を書いたあと、「ひとり法人が現実に使える補助金はほかにあるのか」を調べ直しました。名前が最初に出てくるのが小規模事業者持続化補助金です。商工会議所や商工会が窓口で、「販路開拓」の経費を補助する制度。うちはまだ申請していませんが、公募要領(第20回・第7版)を読んで、ひとり法人の立場で「使えるか」「手間はどれだけか」を整理しておきます。
目次
従業員ゼロでも「小規模事業者」に入る
まず入口です。対象は業種ごとの従業員数で決まります。
| 業種 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
ここで効くのが「常時使用する従業員」の定義です。公募要領は労働基準法上の「解雇の予告を必要とする者」としたうえで、会社役員や同居の親族従業員は含まれないと明記しています。つまり役員1人だけのひとり法人は従業員ゼロで、上限「5人以下」に余裕で収まります。合同会社も対象法人の一覧(株式会社・合名・合資・合同会社・特例有限会社など)に入っています。
除外は大企業向けの条件が中心です。資本金または出資金5億円以上の法人に直接・間接に100%の株式を持たれていないこと、直近3年の課税所得の年平均が15億円を超えていないこと。ひとり法人には関係のない線です。
もう一つ、申請時点で開業していない創業予定者は対象外です。開業届の開業日が申請日より後だとだめ、と要領に例が書かれています。
数字: 2/3・上限50万円、インボイス登録なら+50万円
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4) |
| 補助上限 | 50万円 |
| インボイス特例 | +50万円 |
| 賃金引上げ特例 | +150万円 |
| 両特例 | +200万円 |
ひとり法人に現実的なのは通常枠+インボイス特例=上限100万円です。インボイス特例の要件は、補助事業の終了時点で適格請求書発行事業者の登録を受けていて、かつ「2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者だった」または「2023年10月1日以降に創業した」のどちらかに当てはまること。最近作った法人なら後者で入ります。ただし過去にインボイス特例(旧インボイス枠含む)で採択された事業者は対象外で、特例を希望して要件を1つでも外すと上乗せ分だけでなく全体が交付されないとあります。
賃金引上げ特例は従業員への給与支給が前提なので、従業員ゼロのひとり法人には使えません。
対象経費: 8種類、HP代は「単独不可・上限30万円」
対象経費は8つです。機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費。
ひとり法人が最初に思いつく「会社HPを作る費用」には縛りがあります。
- ウェブサイト関連費のみでの申請はできない。必ずほかの経費と一緒に申請する
- ウェブサイト関連費の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)
- 契約期間が補助事業期間を越えるソフトの使用権は、期間分だけ按分
会社HPを0円で作った記事で書いたとおり、HPそのものは無料でも作れます。補助金を使う意味が出るのは、チラシや展示会、パッケージなど「販路開拓」の経費が本体にあって、HPがその一部に付く構成のときです。
機械装置等費には注意書きがあります。単価50万円(税抜)以上のものは「処分制限財産」になり、補助金を受け取ったあとも一定期間は勝手に売却・廃棄できません。発注総額が50万円(税込)を超える場合は2者以上の見積が必要。中古品も、2者以上の中古品販売事業者からの見積が要り、個人やオークションからの購入は認められません。物販をやっていると「中古を安く仕入れて設備にする」発想が出ますが、この補助金では通りません。
手間の本体は「様式4」と「実績報告」
ここが公庫融資との違いです。公庫の記事は申込〜面談〜融資で終わりますが、補助金は採択されてからが長い。
| 段階 | ひとり法人がやること | 第20回の日付 |
|---|---|---|
| 事前 | GビズIDプライムの取得(必須・電子申請のみ) | 今すぐ |
| 事業計画(様式2)を作る | 経営計画と補助事業計画を書く | 受付開始 2026年11月5日 |
| 様式4を商工会議所・商工会に依頼 | 事業支援計画書を発行してもらう | 発行受付締切 2026年12月4日 |
| 申請 | 電子申請システムで提出 | 受付締切 2026年12月15日 17:00 |
| 採択発表 | 通知を待つ | 2027年3月頃予定 |
| 交付決定 | 見積書等を出して決定を受ける。交付決定日より前の支出は対象外 | 採択から概ね1〜2か月 |
| 補助事業 | 経費を使い、支払を完了する | 事業実施期限 2028年3月31日 |
| 実績報告 | 実績報告書と経理書類を提出 | 事業終了後 |
| 事業効果報告 | 終了1年後の状況を報告 | 1年後 |
見てのとおり、申請してから補助金が振り込まれるまで、早くても半年以上です。しかも経費は先に自分で払い、あとから2/3が戻る後払い。資金繰りとしては「補助金があるから買える」ではなく「買える金があって、その一部が戻る」制度です。
様式4は商工会議所・商工会が発行するもので、締切の11日前が発行受付の締切になっています。要領には「受付締切以降の発行依頼は、いかなる理由があってもできません」とあるので、ここを落とすと申請そのものができません。地域の商工会議所の会員でなくても相談はできますが、計画書を見てもらう時間が要るので、11月に入ってから動くのでは遅いと考えたほうがいい。
実績報告では、見積書・発注書・請求書・支払の証憑を経費ごとに揃えます。電子帳簿保存法の最小対応の記事で書いた「証憑を日付・金額・取引先で引けるようにしておく」が、そのまま補助金の実績報告に効きます。帳簿がぐちゃぐちゃだと、採択されてから一番苦しくなるのがここです。
ひとり法人が申請する価値があるケース
うちの結論はこうです。
- 販路開拓の支出が50万〜100万円くらい、すでに計画に入っているなら申請の価値がある。2/3が戻れば33万〜66万円。手間の対価として見合う
- HPを作りたいだけなら見合わない。単独申請不可・上限30万円で、しかも申請の書類作業のほうが重い
- 今すぐ金が要るなら向かない。後払いで半年以上先。資金が先に要るなら公庫融資が筋
- 帳簿と証憑の管理が回っていないなら、まずそこから。実績報告で止まる
補助金は「もらえるかも」で動くと時間だけ溶けます。使う予定の経費があって、それが対象8経費に入っていて、様式4の締切に間に合う。この3つが揃ってから動くのが、ひとり法人の体力に合った使い方です。
まとめ
- 役員は「常時使用する従業員」に数えないので、従業員ゼロのひとり法人も対象。合同会社も可
- 補助率2/3・上限50万円。2023年10月以降の創業でインボイス登録済みなら+50万円
- HP費用は単独申請不可・上限30万円。中古品は個人・オークション購入不可
- 第20回は受付2026年11月5日〜12月15日、様式4の発行受付は12月4日まで。採択は2027年3月頃、実施期限2028年3月31日
- 後払い・半年以上先。実績報告に耐える帳簿が要る
次に確認すること
- GビズIDプライムを取っているか(取得に日数がかかる)
- 自分の地域の商工会議所・商工会のどちらが窓口か(住所で決まる)と、様式4の相談受付の開始時期
- 公募要領は版が更新されるので、申請前に事務局サイトで最新版と「今後の公募予定」を見る