ひとり法人の第1期決算、税理士に頼まず申告まで終えた — かかったもの・かからなかったもの
第1期の決算と申告を、税理士に依頼せずに終えました。
先に断っておくと、これは「税理士は不要」という話ではありません。うちの1期目がたまたま自力で行ける条件が揃っていたという記録です。同じ条件なら参考になるはずで、条件が違うなら素直に頼んだ方が安い。その線引きも含めて書きます。
「決算」で実際に提出するもの
1期目の自分が一番分かっていなかったのはここでした。「決算」とひとことで言っても、提出物は1つではありません。
| 提出先 | 出すもの |
|---|---|
| 税務署 | 法人税・地方法人税の申告書、決算書(貸借対照表・損益計算書)、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書 |
| 都道府県・市町村 | 法人住民税・事業税の申告書 |
| 税務署(課税事業者の場合) | 消費税の申告書 |
期限はどれも事業年度終了から2か月以内。期限マップの記事で書いたとおり、この2か月は思っているより短いです。うちは決算処理で6か所詰まり、記録の復元に時間を食われました。
自力で行けた条件
振り返ると、うちが税理士なしで通れたのは次の条件が揃っていたからです。
- 取引の種類が少ない。 物販の仕入と売却、あとはわずかな経費。給与計算もない(1期目は役員報酬ゼロ)
- 従業員がいない。 年末調整も社会保険の算定も自分ひとり分の話で済む
- 会計ソフトが決算書までは作ってくれる。 日々の記帳が済んでいれば、貸借対照表と損益計算書はソフトから出る
- 調べる時間を確保できた。 ここが実は一番大きい。分からない論点を1つずつ調べる時間コストを、お金の代わりに払った
逆に言うと、取引が複雑(複数事業・輸出入の還付・従業員あり)、時間がない、初年度から利益が大きい——どれかに当てはまるなら、税理士報酬は「外注費」ではなく「保険料」として払う価値があると思います。うちも全部をひとりで抱えたわけではなく、判断に迷う論点はスポットで専門家に確認する前提で進めました。
赤字でも、かかったもの
1期目は赤字でした。それでも出ていくお金はあります。
- 法人住民税の均等割:赤字でも年7万円程度(自治体・資本金による。設立年度は月割)。期限マップの記事でも書いた、法人という器の維持費です
- 会計ソフト代:法人向けプランの年額
- 自分の時間:復元作業を含めて、まとまった日数。ここは2期目に向けて記録をその場で付ける運用に変えました
かからなかったのは税理士報酬です。ただし上に書いたとおり、これは「浮いた」というより「時間で払った」が実態に近い。
仕入が多い期は、消費税が「戻ってくる」ことがある
1期目でいちばん意外だったのはここです。
物販は先に在庫を仕入れます。売上がまだ小さい期は、売上で預かった消費税より、仕入で払った消費税の方が大きいことが起きます。本則課税なら、この差額は還付申告で戻ってきます。
ただし条件があります。
- 課税事業者であること。 免税事業者のままでは還付という概念自体がない。うちはインボイス登録(経緯はこの記事)で課税事業者になっていた
- 本則課税であること。 簡易課税や2割特例では仕入税額の実額計算をしないので、還付は受けられない
- 適格請求書(インボイス)の保存。 仕入税額控除の要件なので、領収書・請求書が残っていないと控除も還付も消える
「課税事業者になると消費税を払わされる」という話はよく聞きますが、仕入先行の事業では逆に働く期があることは、あまり語られていない気がします。もちろん売上が伸びれば納付側に回るので、これは1期目特有の風景です。
自力申告で詰まりやすい場所
やってみて「ここは事前に知りたかった」という点を3つ。
- 決算書と申告書は別物。 会計ソフトが作ってくれるのは決算書まで。法人税の申告書(別表)と消費税の申告書は、ソフトのプランによっては範囲外で、別のツールか手書きになる。会計ソフト選びの記事で「申告書までカバーされるか」を軸に挙げたのはこの経験からです
- 地方税の申告先は登記の場所で決まる。 税務署に出して終わりではなく、都道府県と市町村にも別々に出す(東京23区は都税事務所にまとまるなど、地域で形が違う)
- 期末在庫の振替を忘れると損益が変わる。 物販は特に影響が大きい。詰まった6か所の記事に書いたとおりです
まとめ
- 「決算」の提出物は1つではない。国税・地方税・消費税で提出先も様式も別
- 自力で行ける条件は、取引が単純・ひとり・記帳済み・時間がある。外れるなら税理士報酬は保険料
- 赤字でも均等割は払う。自力の場合、浮いた報酬は自分の時間で払っている
- 仕入が多い1期目は、本則課税なら消費税が還付になることがある。インボイスの保存が要件
- 決算書と申告書は別物。ソフトがどこまでやってくれるかを先に確認する
制度の細部は変わりますし、この記事はあくまで一つの事例です。金額の大きい判断や迷う論点は、国税庁の資料と税理士への相談で確かめてください。1期目の結論としては——自力申告は可能だが、可能にしているのは日々の記録でした。2期目はそこから始めています。