法人の固定回線・携帯回線どうする問題 — 名義を変えるより先に、お金の流れを揃える
※本記事にはプロモーション(PR)を含みます。
法人を作った直後に地味に迷うのが通信環境です。「ネット回線もスマホも法人名義にしたほうがいいのか?」——先に結論を言うと、名義はどちらでもよくて、大事なのはお金の流れと記録を揃えることです。順番に整理します。
目次
選択肢は3つしかない
| 構成 | 中身 | 向いている人 |
|---|---|---|
| A. 個人名義のまま按分 | 今の回線をそのまま使い、事業利用分だけ経費に | ほぼ全員の初期値 |
| B. 個人名義のまま事業専用 | 事業専用に1本追加契約し、全額経費に | 按分の説明を消したい人 |
| C. 法人名義で契約 | 法人審査を通して契約、全額法人の経費に | 番号や請求を完全分離したい人 |
ひとり法人の実務では、まずAで始めて、困った点が出たらBかCに進むのが最小コストです。「法人を作ったから法人契約にしなきゃ」という義務はありません。
固定回線:自宅兼事務所なら按分が基本形
自宅で仕事をしているなら、自宅の光回線を事業利用の割合で按分して通信費に計上するのが基本形です。按分割合は「週の作業日数」や「使用時間」など、説明できる基準を決めて継続することが本体で、名義が個人であること自体は問題になりません。
法人名義(または事業専用の追加回線)を考えるのは、こういう場合です。
- 按分の説明自体を消したい。 専用回線を1本引けば全額経費で議論が終わる
- 請求書払い・法人カード決済に揃えたい。 経費の記事で書いた「支払を法人カードに寄せて証憑を一元化する」を通信費にも効かせる
- 固定IPが要る。 自宅で常時稼働のプログラムやサーバーを動かす場合。ただしこの用途はVPSに載せ替えるほうが安くつくことが多いので、回線側で解決する前に比較を
新しく引く・乗り換える場合、光コラボ系はどの窓口から申し込むかでキャッシュバック条件がかなり違います(下のPR枠に、当サイトが未利用であることを明記した上で窓口を置いておきます)。
携帯回線:ひとり法人は「個人名義+按分」がデフォルト
スマホも考え方は同じで、個人名義のまま事業利用分を按分が初期値です。私用と事業用が同じ端末なら、通話・データの実態に合わせた割合を決めて継続します。
法人名義(法人携帯)に切り替える判断基準は次の4つです。
- 事業専用の電話番号を分けたい(名刺・特商法表記・取引先対応を私用番号から切り離す)
- かけ放題や複数回線をまとめたい(法人プランは複数回線の一括管理と請求書払いが前提の設計)
- 端末代を法人の経費・資産として明確にしたい(事業用PCの記事と同じ金額の壁の話がスマホにも適用されます)
- 将来、人を入れる予定がある(貸与端末の管理は法人契約が圧倒的に楽)
知られていない実務として、法人携帯はキャリアショップの店頭ではなく代理店窓口経由が主流です。法人契約は審査書類(登記簿など)のやりとりが要るので、来店不要で書類を往復してくれる窓口のほうが速い。逆にデメリットは、個人向けの格安プランより高くつくことがある点と、契約期間の縛りが残っている場合がある点で、「安くするため」に法人契約へ行くと期待外れになります。目的は分離と管理です。
固定電話番号どうする問題 — 銀行・審査で効くのはこっち
「固定電話がないと法人口座を作れない」と聞くことがありますが、正確にはこうです。
- ネット銀行は携帯番号だけで開設できます。固定電話必須と明記する銀行はほぼありません
- ただしメガバンク・信金の口座審査や、法人クレカ・融資・ECモール出店の審査では、固定電話番号が事業実態の確認材料の一つとして効く場面があります
- 通販をやるなら特定商取引法の表記に電話番号が原則必要です。「請求があれば遅滞なく開示する」旨を表示すれば広告上は省略できる扱いもありますが(消費者庁の通信販売Q&A)、モール出店では規約で記載必須のことが多く、私用の携帯番号を晒すか問題は結局ついて回ります
今の解は、物理的な電話回線を引くことではありません。スマホのアプリで03/06番号の発着信ができるクラウド固定電話(月1,000円前後〜)で足ります。1つだけ注意があって、050番号は審査や表記で「固定電話」と認められないことがあるので、取るなら市外局番(0AB-J)の番号を選んでください。
名義と支払の「ねじれ」だけは放置しない
一番やってはいけないのは、個人名義の回線料金を、法人口座から何の整理もなく引き落とすことです。契約者と支払者がねじれると、役員への貸付か立替かの整理が必要になり、決算のつまずきの記事で書いた「名義・金銭・申告主体を揃える」原則に反します。
実務の整理はこうです。
- 個人名義のまま経費化する場合:いったん個人が支払い、按分後の事業利用分を立替精算として法人から個人へ精算する(精算書を残す)
- インボイス:個人名義の請求書は法人宛のインボイスにはなりませんが、従業員・役員の立替精算として帳簿と立替金精算書を整えれば仕入税額控除の道があります。細部は要件があるので、金額が大きくなってきたら国税庁のQ&Aか税理士で確認を
- 法人名義に揃えた場合:この整理が全部消えます。Cの本当のメリットは料金ではなく、この事務が消えることです
まとめ
- 名義変更は義務ではない。個人名義+按分+立替精算がひとり法人の初期値
- 固定回線は「按分の説明を消したい」「固定IPが要る」ときに専用化・法人化を検討。常時稼働用途は先にVPSと比較
- 携帯の法人化は「番号の分離」「複数回線管理」「端末の経費明確化」が目的。安くするためではない
- 名義と支払のねじれだけは放置しない。揃えるか、精算書で整理するか
- 固定電話は物理回線でなくクラウド固定電話(03/06番号)で足りる。050は審査で弾かれることがある
税務の扱いは事業の実態によって変わります。金額が大きい判断は国税庁の資料か税理士に確認してください。