米国向け輸出の追加関税、結局いくら乗るのか — 配送業者から届いた通知を輸出セラー目線で読み解く
今朝、eBay輸出で使っているSpeedPAKの運営会社(オレンジコネックス)から「米国向け鉄鋼・アルミニウム・銅等に対する追加関税に関するお知らせ」という通知が届きました。読み飛ばされがちな種類のメールですが、内容は小規模輸出セラーの値付けに直結するものだったので、輸出をやっている立場で読み解いておきます。
全体地図:米国宛の関税は「三層」で考える
2026年8月時点、日本から米国への商品には次の構造で関税がかかります(少額免税は2025年8月に撤廃済みなので、低額でも対象です)。
- 基本関税(MFN税率)——品目ごとに決まっている通常の関税。全ての貨物に必ずかかる
- Section 232 追加関税——鉄鋼・アルミ・銅・自動車部品を対象にした上乗せ(0%/25%/50%)
- 新Section 301 追加関税——2026年7月24日以降、232の対象にならなかった貨物にかかる上乗せ
ポイントは、232と301はどちらか一方だということです。金属もので232を食らうか、それ以外で301を食らうか。「何もかからない」ルートは基本的にありません。
Section 232の判定は3ステップ
通知に載っていた判定フローが分かりやすかったので、そのまま噛み砕きます。
- 自動車・自動車部品(HS87章など)か? → はいなら追加25%で確定。金属含有率の確認は不要
- (自動車以外で)鉄鋼・アルミ・銅の重量比が15%以上か? → 15%未満なら232の対象外。基本関税+301の世界へ
- 15%以上なら、「派生品」か「基礎金属」か? → 金物・工具などの加工品(派生品)は追加25%、鋼材・アルミ材・銅材そのもの(基礎金属)は追加50%
実務でいちばん効くのはステップ2の「金属重量比15%」です。カメラの三脚、工具、金属パーツを含むホビー用品——「これは金属もの扱いになるのか?」の線がここで引かれます。通知は、材質が不明な場合は仕入先に材質成分表(Material Composition Sheet)を請求することを勧めています。
新301条の「合計12.5%まで補完」が一番分かりにくい
2026年7月24日から始まった新しいSection 301措置(強制労働関連)は、独特の計算方式です。通知の説明によると、「基本関税に上乗せして、合計が12.5%になるまで補完する」方式(net of MFN)とのこと。つまり:
| 基本関税(MFN) | 301の上乗せ | 合計 |
|---|---|---|
| 0%(おもちゃ・ゲーム・スマホ等) | +12.5% | 12.5% |
| 2.5%(乗用車など) | +10% | 12.5% |
| 12.5%以上(衣類など) | +0% | 元の税率のまま |
これが意味するところは重要で、「基本関税0%だから安心」だった品目こそ、きっちり12.5%かかるようになったということです。トレカ・フィギュア・ゲーム(HTS上のおもちゃ・ゲーム類は基本0%)、ITA協定で0%だったスマホ・PC周辺——このあたりが該当します。
うちの利益計算で米国宛は申告額の12.5〜15%を最初から織り込むと書いてきたのは、まさにこの構造のためです。今回の通知で「なぜ0%のはずの品目に関税を織り込むのか」の答えが公式に整理された形になります。
品目別にざっくり言うと
通知に載っていた基本関税の目安と組み合わせると、小規模セラーがよく扱う品目はこう整理できます(最終確認は後述のHTSで)。
- トレカ・おもちゃ・ゲーム・フィギュア:基本0%→新301で実質12.5%
- カメラ・レンズなど精密機器:多くが基本0%圏→同じく12.5%側。ただし金属重量比15%以上のアクセサリ(三脚・リグ等)は232の25%側に入り得る
- 工具・金物・カトラリー:金属15%以上なら232で25%(基本関税も数%乗る)
- 衣類・スニーカー:基本関税がもともと高い(12〜48%)ので301の上乗せは実質なし。ただし元が重い
- 鋼材・金属素材そのもの:50%。素材輸出は別世界と考える
実務でやること3つ
- 自分の主力商材のHTSコードを一度引く。公式はUSITCのHTS検索。10桁コードで基本関税が確定し、232/301のどちら側かが見える
- 金属を含む商材は材質成分表を仕入先に請求。15%の線がグレーな商材が一番危ない
- 値付けに織り込む。うちは12.5〜15%を最初から利益計算に入れています。関税を「たまに来る事故」扱いにすると、固定費の壁と合わせて利益が想定から二重にずれます
注意書き
この記事は配送事業者の通知(2026年8月20日受領)を輸出セラー目線で整理したものです。通知自体が「参考情報であり、最終的な課税はCBP(米国税関・国境警備局)の判断による」と明記しているとおり、米国の関税制度はいま極めて頻繁に変わっています。実際の出荷判断の前に、USITC HTSとCBPの最新ガイダンスを確認してください。金額が大きい場合は通関業者・専門家への相談が確実です。